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HPC 導入事例: 独立行政法人 理化学研究所
ゲノム科学総合研究センター 高速分子シミュレーション研究チーム
生命科学の研究を加速する "ペタフロップス・コンピューター" の実現
背景 システムの解説 今後の展望
 

 

2006年6月、独立行政法人理化学研究所 (理研) 、日本 SGI 株式会社およびインテルは、理論ピーク性能 1 ペタフロップス (PFLOPS: 1 秒間に 1,000 兆回の演算を行う能力) を実現する分子動力学シミュレーション専用コンピュータ・システム「MDGRAPE3 (エムディーグレープ・スリー)」の構築成功を発表しました。1 PFLOPS の理論ピーク性能を持つこの MDGRAPE-3 システム は、遺伝子情報から特定のタンパク質を生成するメカニズムの解明、ガンに代表される疾病の原因究明など、生命科学における広範囲な分野での研究のため、横浜の理研ゲノム科学総合研究センターで 24 時間フル稼働しています。

1 PFLOPS の理論ピーク性能を実現したMDGRAPE-3 システム
1 PFLOPS の理論ピーク性能を実現したMDGRAPE-3 システム
64 台のデュアルコア インテル® Xeon® プロセッサー 5150 搭載サーバーを含む 101 台のサーバーと 200 台の MDGRAPE-3 ユニットが 24 時間フル稼働しています。
 
ゲノム科学研究の中核「ゲノム科学総合研究センター」
 

タンパク質の立体構造解析やその結果に基づく創薬など、いわゆる "ポスト・ゲノム" の研究に、世界中の研究機関が取り組んでいます。自然科学における国内唯一の総合研究機関として 1 世紀近い歴史を誇る独立行政法人 理化学研究所 (以下、理研) が横浜市鶴見区内に開設した横浜研究所は、世界最大規模の NMR (Nuclear Magnetic Resonance : 核磁気共鳴) 施設やタンパク質大量発現精製装置をはじめとする最先端の研究設備を擁し、生命科学をリードしています。

1998年、国内におけるゲノム科学研究の中核として発足した「ゲノム科学総合研究センター (GSC)」は、横浜研究所が持つ 5 つの研究センターのひとつで、6 つの研究グループが、ゲノム、遺伝子、タンパク質の機能・構造解析について数々の成果を上げています。また、国内外の大学、企業との共同研究、あるいは国家プロジェクトとの連携を通じて、医療や創薬はもちろん、食品、農業、その他の様々な産業における将来に向けた基盤構築の一翼を担っています。

 
世界最高水準の性能でタンパク質科学の発展に貢献する "MDGRAPE-3 システム"
 

泰地 真弘人 博士率いるシステム情報生物学研究グループ 高速分子シミュレーション研究チームがインテル、日本 SGI 株式会社と協力して開発した 1 PFLOPS の理論ピーク性能を持つ "MDGRAPE-3 システム"は、分子動力学 (MD: Molecular Dynamics) シミュレーションにより、タンパク質約 3,000 種類についての機能・構造解析、および研究成果の産業移転を目指す、タンパク 3000 プロジェクトの一環です。

 
泰地 真弘人 博士 チームリーダー
泰地 真弘人 博士

東京大学 大学院でレーザー分光学の研究を行っていた 1980年代の後半から 1990年代初頭にかけて、イジング (Ising) モデルのモンテカルロ・シミュレーション専用機 "m-TIS" (1 号機、2 号機) を開発、その後、重力多体問題専用計算機 "GRAPE (Gravity Pipe)" のプロジェクトに参加するなど、科学計算向け専用機の分野では草分け的存在。
 
 

MD シミュレーションとは、物質を構成する原子の運動の様子をニュートン力学に基づいてコンピューター上で再現する手法です。ニュートン力学と言えば、質点間に働く万有引力の法則が有名ですが、原子の間に働く力の作用についても、同様に距離の逆自乗に比例するクーロン力、原子の組み合わせで変わる分子間力などの力の法則が知られています。このことを利用して、物質の性質を理解しようとするのが MD シミュレーションです。

『実験ベースでは市販されていない薬のスクリーニングは不可能ですが、MD シミュレーションではそうした未知の薬についても研究できます。さらに、タンパク質の立体構造予測のシミュレーションなども行っています。タンパク質を構成する原子は、常温では揺らぎながら運動していますが、実験ではそうした微妙な動きは把握できません。高精度の MD シミュレーションでは、原子レベルでの詳細な動きについて知ることができ、実験では得られない情報を得ることができます。』(泰地 博士)

小規模システムによるデモ風景
小規模システムによるデモ風景
分子動力学シミュレーション・パッケージ "Amber*" を使い、イモチ病 (イネの伝染病) の原因菌と農薬の結合の様子を、高解像度のステレオ 3D アニメーションで表示。原子数は 4,953 個。周りにある水分子の挙動までも正確に再現され、3D メガネを通して構造を立体的に把握できます。軌道の微調整や分子同士の噛み合わせ方は、キーボードやペン型のコントローラーで操作します。システムには、2 つの MDGRAPE-3 チップ搭載ボードを装着したインテル® Pentium® D プロセッサー・ベースのサーバーを使用。リモート、ローカル、いずれの環境にも対応。

1 PFLOPSの計算性能を測る例として、スーパーコンピュータの性能ランキング「TOP500* (英語)」があります。2006年6月16日現在、現在世界第 1 位にランクされているスーパーコンピューターの理論ピーク性能は、360 テラフロップス (TFLOPS: 0.36PFLOPS に当たる) です。今回開発した MDGRAPE-3システム では、TOP500 リストの基準となる「Linpack* ベンチマーク」を実行できないため、性能を直接比べることはできませんが、理論ピーク性能でその約 3 倍に相当します。

理論ピーク性能である 1 PFLOPS の性能では、100 万原子クラスのタンパク質、あるいはマイクロ秒という長い時間の動きについても高速、高精度の解析ができるようになります。MDGRAPE-3 システム は、タンパク質 − タンパク質相互作用や、遺伝子情報から特定のタンパク質を生成するメカニズムの解明、ガンに代表される疾病の原因究明など、生命科学における広範囲な分野での貢献が期待されています。

『1 PFLOPS の性能を使うことで、例えば創薬において 20 TFLOPS クラスの計算機で処理できるのは 1日に数十サンプルくらいですが、1 PFLOPS になると 1,000 から数千対サンプル/日が可能となります。』(泰地 博士)

 
 
 

この記事は 2006年6月に行われた取材を基に行なわれた取材に基づき作られました。

* その他の社名、製品名などは、一般に各社の商標または登録商標です。

 
 
 
パフォーマンス比較
最新のデュアルコア インテル® Xeon® プロセッサーはパフォーマンスでも従来製品を圧倒しています。
 

 
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